軽自動車の64ps(馬力)自主規制とターボ装置の関係

スズキタービン

軽自動車には「最大出力64ps馬力」という、自動車メーカーの自主規制があります。

80年代に、普通車軽自動車問わず、各社が自動車エンジンの出力向上に明け暮れていた時代がありました。軽自動車出力向上競争を背景とし、国がその安全性を憂慮して指導に入った事から、各メーカーが行ったものです。この規制は、ターボ装置の搭載と密接な関係があります。

この時期に最も出力のあった、スズキのアルトワークスのターボ装着車が「最大出力64馬力」であったため、これを上限としようということで始まったのが自主規制というものになります。

こうみるとすでに数十年前に達成していた数値なので、現在の技術であればターボ装置を利用すれば64馬力以上は軽々出せる数値だと思います。

※現在は普通車の馬力規制がなくなっていますが、軽自動車は未だに64馬力規制が続いています。実際それ以上でてるんじゃないか?という車はありますが、現状は最高出力よりも燃費性能の競争に各社明け暮れているので当面は解除されないでしょうね。

ところでこの軽自動車の64馬力規制は、ターボ車以外では達成してる車はあるのでしょうか?

過去にホンダが販売していたビートという車は、現在唯一NA(ノンターボ自然吸気エンジン)で64馬力を出していたことで知られています。スポーツタイプの軽自動車だったこともあり、まるでバイクのようなエンジンで高回転で出力を出すタイプであったもの。現在は出力よりも、実生活で使用するエンジン回転域での効率化に抑えているため、ターボなしで64馬力をたたき出す軽自動車はでていません。

なぜターボなしでは軽自動車の出力を、自主規制枠にすら上げられないのでしょうか?

軽自動車の規格の1つに「排気量660cc以下」という条件があります。自動車メーカーは、軽自動車を作る際に「排気量660ccのエンジンで、できる限り効率良く高い出力を出そう」と考えて、研究・開発をしています。そこで、まず考えられるのが「エンジンの回転数を上げて、その分だけ高馬力を得る」というアイデアです。

しかし、軽自動車用のエンジンは小型で高温になりやすく「冷却損失」というものが起きやすいです。回転を上げた分熱によるパーツのひずみが生じ、熱量の発散効率もわるいために、むやみに回転を上げても燃料が効率良く使えなくなってしまいます。

そこで、限られた条件内で、より効率よく馬力を上げる手段として利用しやすいのがターボ装置です。これを搭載することで、規格の排気量内で、必要以上にエンジン回転を上げなくても自主規制内の最大出力64馬力を効率良く出せる仕組みになっています。

64馬力の規格を到達するためには、未だにターボ装置の採用が一般的となっているのには、エンジン排気量そのものに規制がかかった軽自動車ならではの事情と言えるでしょう。

ターボ装置は「燃費が悪くなるもの」というイメージがありますが、技術の使い方によっては燃費を大きく向上させつつ、車の性能を向上させる力があるものです。例えば、欧州の車両メーカーを中心に低燃費を実現する「ダウンサウジングコンセプト」という設計に利用されています。日本でもこの動きに合わせて見直しが進んでいて、ダウンサウジングコンセプトの設計で作られたエンジンを搭載した軽自動車が登場しています。

ターボ装置は従来、車の速度や馬力を向上させる物として利用されてきました。これは日本でも例外ではありませんでしたが、現在は更なる燃費の向上にも利用するべく、研究や開発が行われています。日本の軽自動車ユーザーにとってはまだ、燃費を犠牲にして走行性能をあげるものです。しかし、各メーカーがこれから発表していく軽自動車が広まっていくことで、その印象や認識は大きく変わっていくでしょう。